7月12日 春風

文房具ってものに心躍る人は多いと思います。

ぼくの文房具箱にも使うたびとくべつな気持ちになる文房具がいくつか。

チェコの赤ペン、オランダの黒ペン、ドイツのメジャー、月光荘の消しゴム、セントロペンのグレーのペンは再びチェコ。

外国製なんだぜ〜って自慢したいわけではなくて(高価なものでもないし)、どれも(犬の)散歩がてら近所の文房具屋さんハルカゼ舎で購入したものたち。

店主さんがご自分のセンスで仕入れた文房具はそれぞれのデザインや使い勝手もいいけれど、それだけじゃない。

ひとつひとつの文房具に対して「それすごくいいでしょ〜。すっっごいかわいいの〜」と店主さんの宝物のような愛情が注がれているのがステキなのです。

何気ない消しゴムひとつでも、これをとても好きな人がいるというのがひとつ乗っかってるんです。
チェコのペンも「チェコ製である!」っていうことの上にさらに、このペンが好きで仕入れた店主さんのキラキラした笑顔がひとつ乗っかっています。

だから、使うたび「いいね!」を押してもらっているようなとくべつな文房具たち。
そりゃあココロオドルわけです。




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ぼくが好きなnoritakeさんのバッヂをはじめて見たのもハルカゼ舎でした。
クギ、脚立、トンカチ。あげくの果ての無地バッヂ……。























どこの店で見てもこの強烈なデザインに衝撃は受けたでしょうけど、
ハルカゼ舎じゃなければ実際に購入するにはいたらなかったかも。

やはりこれも「すっっごいいいよね!」って気持ちがいっこ乗っかってるから、脚立バッヂを帽子にくっつけたくなるし、会う人に「え、脚立…?」って言われるとうれしくなる。





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そのハルカゼ舎さんが作った本




















5月のある晴れた水曜日(店の定休日)に
12個の文房具を持って経堂界隈の12箇所で撮影した12枚の写真と、それらに添えられた12の散文詩で構成されています。

ぼくは経堂に住んでるから
「あ、あそこの郵便局だ」とか「コルティの屋上から撮ったんだ」とか、自分が住んでる町がアド街ック天国で紹介されているような気分で読みましたけど、
逆にぜんぜん経堂を知らない状態で、「下高井戸シネマ」や「羽根木公園」なんていう文字を見て、行ったことのない町を頭に描きながらページをめくるのもきっとたのしいんだろうなと思います。

写真はひとつの風景にひとつの文房具が、チョコンと、ときにはデデンと置かれているというちょっとシュールでかわいいものです。

ぼくが好きなのは、経堂図書館の写真。
本棚にずらっと並んだ外国文学の背表紙の前に置かれたハンガリーの紙製分度器の写真。

なぜかこの分度器が、ちょっと恥ずかしそうにでももしかしたらちょっと誇らしげに立っているように見えてくるのがおかしい。
なんだか七五三のお祝いに千歳飴を持たされた子どものよう。


散文詩も普段使っている言葉や表現で町のようすがやさしく語られています。
写真には人がひとりも写っていないのに、散文詩には「人」「友人」という文字が多く使われているのもうれしい。


やさしくあたたかく生活している人が作った本なんだな〜と思うのです。