犬の散歩をしていると、
正面から素材のよさそうな黒のワンピースを着たご婦人と、エスカレーターで短大まで行きそうな女子中学生が「きゃ〜、かわいい♥」と近づいてきました。
うちの犬は人間好きだし
そういう感じで近づいてくる人間にはとくに「イエ〜イ!」って感じで自分からじゃれていくので、この母娘もさらに「きゃ〜♥」と興奮。
「犬飼ってるんですか?」と声をかけてみると
「うちもヨークシャーだったんです」と母。
たまにあります。過去形。
「17歳だったんです」とさらに。
よく見ると二人ともちょっと泣きそうな顔。
ついには「においかいでもいいですか(犬の)?」と母。
「どうぞどうぞ」の僕の返事を合図に、いきおいよく犬に顔をうずめて、17歳で逝った愛犬を五感で呼び戻したい母。
どちらかというと母の方がペットロスが重いようで、
「うちの娘は新しい犬飼いたいっていうんですけど、私はそんなに気になれなくて……」と。
娘も母の気持ちを案じている様子。
「ありがとうございました〜!」と笑顔で去って行く母娘。
うちの犬はというと、黄色い声で遊んでもらって匂いもかがれて上機嫌。
きっといいことしたんだよ、犬よ。