連載『好きにならずにいられない』

43歳、オタク、女性経験ナシの大男フーシが初めての恋に奮闘するのがアイスランド映画『好きにならずにいられない』です。北欧の映画賞で主演男優賞を総ナメしているだけあって、主役のフーシのインパクトがすごいんですよ。
ジオラマが好き(第二次世界大戦ゲームという謎のゲーム)で、ラジオのリクエスト番組の常連リスナーで、会社ではちょっと(いや、かなり)いじめられていて、金曜の夜は1人でタイ料理を食べる、というのがフーシの毎日。
フーシを見ていると「初めての恋、頑張って!応援するよ!」と思わず上から目線で見てしまいそうになるんですが、実はそんじょそこらの男では敵わないくらいに男らしかった!
そんなアイスランドの妖精(?)フーシの隠された男らしさを紹介しますよ。どうぞ!




四コマ映画『ドリーム』

映画ドリーム 

ドリーム私たちのアポロ計画

ものすごくいろんな要素が盛り込まれてるのに本当に観やすい。

黒人差別、女性差別、女性の上司、男性の同僚、ロシアとの宇宙開発競争、数学、結婚、子育て、シングルマザー、さらにはキッチリと泣かせるラブロマンスも……。










軽快な演出のおかげでこれらがテンポよく楽しめます。
ファレル・ウィリアムの60年代風の新曲たちもかっこいいし。


まぁまぁまぁ何と言っても、主役の3人がステキなのですよ。
ジャネール・モネイがまず超絶美人。こんな美人どこにいたレベルの美形。
『ムーンライト』での主人公の親代わりの女性を演じた方。
これが映画出演2本目とのこと。基本歌手みたいですね。
今作では元ヤンみたいなキャラで、警察官にも食ってかかりそうなほど血気盛んな役でハラハラします。。


タラジ・P・ヘンソンは、すみません、この映画で認知しました。
柴田理恵感がスゴイですが、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でブラピの育ての親やった方でしたか。
この映画の主役はこの人。
繊細な演技で、母であり、働く女性であり、恋する女性であり、夢見る人間である、という1人の人間の多面性を観せてくれてます。


そして、みんな大好きオクタヴィア・スペンサー。
彼女が今回もまた面白い。かわいい。
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』と全く同じ役柄ですけどね。いいの!


あと面白いのは、悪役を演じたキルスティン・ダンスト。
誰だこの腹たつおばさんは!と思っていたらまさかのキルスティン・ダンスト。
役作りでしょうけど、顔がひどいことになってますよ。。
授賞式の時にはいつもの美しさになっていたので安心。

ケビン・コスナーはかっこよすぎ。ずるい。

**

僕はたまたま飛行機で観れたんですが、やはり映画館でも観たい。
音楽がいいのでちゃんといい音で聴きたいし、人間ドラマですけど、ロケットも飛ぶわけですからそのシーンはやっぱ大画面で。

数学の天才だっつってんのに、「黒人」で「女性」ってことでヒエラルキーの底辺にいるところからの大逆転はやっぱり痛快。もう一回観たい。

キャサリン・ジョンソンさんは今98歳でこないだのアカデミー賞にも出席されてましたね。
キャサリンさんが存命中にこの映画が公開され、評価もされて本当に良かった!


映画ドリーム 
ドリーム私たちのアポロ計画

四コマ映画『ひつじ村の兄弟』

『ひつじ村の兄弟





やっぱこういうラスト大好き。こんくらいのタイミングで終わってくれるのがなぜか好き。最高。

やっぱね、伏線全部キレイに回収して謎も全部キレイに明らかにしてキレイキレイな感じで終わるなんてものはね、「伝染病が出たら羊は全頭殺処分、小屋も全部解体&殺菌消毒して回る」ようなものですよ。

これだけ登場人物のそれぞれの心情も伝わって、地域の問題もわかって、珍しくて美しい景色も見れて、素敵なシーンもたくさんたくさんあって、もう十分十分十分十分(映画は93分)。

あと、伝書鳩ならぬ伝書犬として活躍する牧羊犬のかわいさたるや。。。

おじいちゃん2人が裸で抱き合うってのは北欧では共通のオモシロポイントなんですね。
ノルウェー映画『ハロルドが笑う その日まで』でもおじいちゃんが2人抱き合って温め合うシーンがあり印象的でしたが。

やっぱ寒い地域だから「凍死」が身近にあって、蘇生法として「裸で抱き合う」ってのが緊迫した状況にやるものだし、冷静に考えてみれば裸で抱き合うって笑っちゃうし、ってことなんでしょうね。

今回は裸にして風呂に入れてあっためる、ってのもありましたし、かなり雑な病院への搬入方法もありましたし。
いやぁ面白かったな〜。
最高最高最高。
映画館で見りゃ良かったなぁ、絶対寝ただろうけど。

『ひつじ村の兄弟

四コマ映画『夜に生きる』



ベン・アフレックってやっぱ巨大ロボット感がすごいので、ちょっとした仕草がもう面白い。
殴られて鼻折られて入院してるシーンも、お腹撃たれるシーンもちょっと笑える(ひどい…)。
自分でもその面白さをわかっているようなので今回も面白シーン満載(そういう映画ではない)。
エル・ファニングが怪演。
首の長さ、腕の長さ、肌の白さを存分に活かしてベン・アフレックの最強の敵を演じてます。
『葛城事件』の田中麗奈的な役どころ。








『しあわせな人生の選択』


『しあわせな人生の選択』

典型的なキャラクターが1人もいないのが良かった。
物語を展開させるためだけの便利だけど軽薄なキャラクターはおらず、みんな多面的で自由だから会話やエピソードがどれも自然でリアルだった。

いわゆる余命モノだけど御涙頂戴シーンはない。
破天荒に生きてきた死にゆく男とそれを自分なりに受け止める人たちの4日間を見守るように撮影されてる。

大切な人の喪失の日は誰にでもいつか来るけど、この映画はその練習というか予告編というか、ゆっくりと心の準備をさせてくれるようなものだった。

僕は犬飼ってて、犬が死ぬのは毎日恐怖だけど自分が先に死んじゃうことはあまり考えてなかった。
周りから見りゃ滑稽だろうけどこの大切な大切なワンちゃんをいったい誰に託せばいいのか。
きっと主人公と同じ決断をするだろうな。




















『しあわせな人生の選択』

『ザ・コンサルタント』

ベン・アフレック演じるクリスチャン・ウルフ田舎町の会計士。しかし裏の顔は年収1億ドルを稼ぐ命中率100%のスナイパー。
会計事務所で淡々と仕事をする姿正確な射撃やマッチョな体でのアクションはギャップがすごいけれど、主人公に二面性があるアクション映画は今となっては正直珍しくはないです。
『ザ・コンサルタント』が他のアクション映画と一線を画すポイントは、さらに一歩踏み込んだキャラクターの多面性ではないでしょうか。映画の中でウルフのキャラクター紹介に割く時間が結構長いんです。サスペンスやアクションを楽しむだけではなく、ウルフというキャラクターをじっくり味わうのが正解なのです。
それではウルフの〝譲れない7つのルール〟をどうぞご確認ください。




[4]の指フッフッが一番特徴的ですし、ここに萌えた!という方も多いのではないでしょうか。これは普段の生活にも取り入れやすいものですよ。仕事で本気出す前に指フッフッ。でもちゃんとかっこ良くやらないと自分で鏡見てやってみたら死ぬほど間抜けなおじさんになっててビックリしましたよ。「あのおじさんなんで突然指の匂い嗅いだの?」って向かいの席の女子に思われちゃうので注意です。ウルフの仕草をDVDで勉強してトライしましょう。

[7]は、自分はバットマンとして『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でスーパーマンと戦ってるのにスーパーマンの初版本を宝物として持ってるってのはだいぶ茶目っ気たっぷりの演出ですが、実はあともう一つ「映画会社違うじゃん!」って突っ込みたくなるお宝も出てきます。ぜひ見つけていただきたいですが、一瞬しか映らないので一回でこれに気づけたらあなたの動体視力は相当なものですよ。

エルミタージュ美術館 美を守る宮殿

「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」

 83分座ってりゃ、戦火から学芸員達が死を賭して美術品を守った250年の歴史を説明してくれて、スクリーンで筆先の毛の一本の絵の具の流れや、ベスト盤みたいな選りすぐりの名画をじゃんじゃん観られて、音楽もいいんだからこりゃいいわ。
美術館ってゆっくり歩くから足疲れるし、そんなに近づいて見れないし、説明文読むのも大変だし。入館料も同じくらい取られるし。

映画の最後に演奏される曲が何と『青銅の騎士』! 調べてみたら “青銅の騎士”は露皇帝ピョートル1世の騎馬像のことで、エルミタージュ美術館のあるサンクトペテルブルクを創建したのがピョートル1世だった!





【連載】ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

フィルマガでの映画コラム連載2回目です。

前回は「なんか(文章)長くない?(文章量)決まってんの?」と近隣からクレームが来ました。。 文章量決まってないし内容もだいぶ自由なので、好きな映画ほど書きたいことがいっぱいで長文になってしまい、今回の『ヘルプ』は伸び伸び書いたら当初4500字で、、さすがに担当者さんから「あのぅ…」って感じで連絡来まして、「ですよね…」ってことでザクザク削減してなんとか2600字です。

差別問題扱ってる映画なんでね、どうしても筆が暴れるのさ。 
次回は1500字くらいに抑えたい。

  【『ムーンライト』と併せて観たい!】エマ・ストーン主演の感動作『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』




サウルの息子

『サウルの息子』

ナチス系はちょこちょこ観ているので
観た後にブルーな気持ちになるのは毎度のことですが
この映画だけはちょっと耐えられそうにないと思って敬遠していました。

『サウルの息子』を観ずに2016年の映画を語るなかれ、という文字を見たりしたし、
すんげえ賞獲ってるし
友人にも勧められたし、
さらに多大なご厚意もありまして
ついに観ることができました。



***


そもそも、ユダヤ人を地球上から根絶やしにする作戦を実行する中で
ドイツ軍は村々を転々としながらユダヤ人を主として障害者やロマ、同性愛者などを大虐殺していったわけですが、言っても結局は「人間」。
ドイツ兵たちは次々にPTSDになっていったそう。
PTSDになった兵士は戦場で使い物にならない。

ドイツ兵自身にこのユダヤ人消滅作戦をやらせるのは「非効率」だと考えて、
手を汚す作業はユダヤ人にやらせることに。
さらに、村々に自分たちが訪れるのもまた「非効率」なので
貨物列車にぎゅうぎゅうに押し込んでガス室のある収容所まで運ぶことになるわけです。
4〜5日ずっとぎゅうぎゅう詰めなので、、

あ〜もう書く気がしない。うおお。



***


ちなみに、
上に書いたことは『サウルの息子』には出てきません。
『サウルの息子』までの流れです。


何が言いたいのかというと、
僕がこの映画を観て思ったのは

「人間はこんなことに耐えられるように作られてはいない」

ということです。


人間は、
外国人排斥や人種差別や自国礼賛の集団心理の行き着く先でこんな地獄が作ったり、
毎日毎日一生懸命地獄を実行し続けられるんだけど
人間の精神はそれに耐えられるようにはできてないんだな、ということを感じました。
ドイツ兵だってPTSDになるわけです。

だけど、できてしまう、という恐ろしさ。
そういう流れができるとそれに乗っちゃう凡庸さ。

もっともっと人間をよく知らないと。
人間は弱いし凡庸。なのに、やれちゃう。



『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』も観なきゃ観なきゃと思いつつ東京での上映は終わってしまった。

人はちょっと命令されただけで人を殺せちゃう、という実験結果を出してしまったミルグラム実験の話。
ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」説を科学的に裏付けた、とされて社会に衝撃を与えた実験。

この実験については大学の時に勉強しましたが、実験の仕組み程度しか覚えていなくて。


アイヒマンってのはヒトラーの下で「数百万の人々を強制収容所へ移送するにあたって指揮的役割を担っ」ていた男。

戦後12年経ってアルゼンチンに潜伏していたアイヒマンをやっと拘束(この辺りのことは「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」を)。
世界中が注目する中、エルサレムで裁判にかけられました(この辺りのことは「ハンナ・アーレント」を)。

人々は、アイヒマンはどんなに悪魔的な人間なのだろうか、どんな異常者なのだろうか、と思っていたわけですが、蓋を開けてみたら単なる中間管理職だったという衝撃。
命令通りに事務仕事をとても優秀に進めることができ自身の考えとして「上に従っただけ」というサラリーマン的思想の持ち主。

それが当時の人たちにとっても恐怖だったわけです。
え〜、隣のおじさんみたいじゃん、と。


そっから、じゃあアイヒマンはどういう心理的な過程を経て戦犯アイヒマンとなったのかと実証するための実験として行われたのが「ミルグラム実験」であり、それを描いたのが『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』

アイヒマンの後継者、という言葉の意味は、アイヒマンの後継者は我々だよ、と。
我々だってアイヒマンと同じことする可能性があるんだよ、と。




***


さて、
この『サウルの息子』はずっと一人称の映画です。

ホロコーストに連れてこられて同胞のユダヤ人たちをガス室に送り込む役割(ゾンダーコマンド)をさせられて数ヶ月後には自分も殺されるという運命がわかっている男、の視点でずっと描かれます。
映画の中での時間経過は1日半。

ナチスは、ユダヤ人を全部消し終わったらホロコーストの記録を全部消し去ろうとしていたので、ゾンダーコマンドもある一定期間働かせたら殺すし、ヨーロッパ各地にあったホロコーストも全部燃やして歴史から抹消するつもりでした。

なので、ゾンダーコマンドたちは自分たちは近々死んでしまうだろうけど、歴史からも消えてしまうことを避けるために、メモを残していました。

ホロコーストに連れてきたユダヤ人たちをガス室に入れる前に服を脱がせるので、そのポケットの中にある紙やペンを隠し持って(見つかったら殺される)、自分たちがやらされていることをメモし瓶に入れ土に埋めました。
戦後それらは発見され、かなり正確にゾンダーコマンドの日々の仕事がわかったと言います。


ゾンダーコマンドの中には記録に残すだけではなく、
どうやって手に入れたのかは描かれていなかったんですが
火薬を集めて焼却炉を爆破して集団蜂起を企てたりもしました。

実際にホロコーストでの集団蜂起はいくつかあったようですが
成功(と言えるのか)したのは一箇所だけで
『サウルの息子』はそこを舞台としています。



***




集団蜂起するためにゾンダーコマンドたちは兵士に見つからないように相談を繰り返さなきゃいけないんですが、ユダヤ人と言っても国が違うので言葉が通じない。
翻訳者を解しながら短い言葉で連絡し合うがなかなか効率的には行かず。

しかしみんな協力してなんとか焼却炉を爆破させるとこまでもっていきたいと思ってるんだけど、
実はひとりそれとは関係ないことに力を注ぐのがサウル。

ガス室のある子どもの遺体を「自分の息子だ」と思い、その遺体をかくまい(見つかったら殺される)、せめてユダヤ教に則って埋葬してやりたいと願い、それに奔走します。


映画を観ていると
「サウル!もういいじゃんソレ!その子の埋葬より脱出作戦に注力して!」と思ってしまうんだけど、違う。

その子の遺体はそのままにしてたら思いっきり焼かれて粉末にされて(記録が残らないように)全部川に撒かれてしまう(記録が残らないように)。
人間としての尊厳など骨粉の粒一つもないほどの処理をされてしまう。

自分の命をとしてでも
「自分の息子」の遺体を人間として埋葬したいと願うのが人間らしさか、
集団蜂起が人間らしさか、簡単には答えは出せないこと。


サウルにとっては、この方法で「人間らしさ」を示すことがナチスへの反抗だっただろうし、自分の人間としての証だったはず。




*****

注意しなけりゃいけないのは、
この映画が一人称であるから自動的に観客はサウル視点になります。

つまり被害者視点。
(おかげで自分がゾンダーコマンドになった感覚になれるのですが)

でも、前述通り、誰もがゾンダーコマンドを指揮する立場になりうるのです。
自分がそっちかもしれない。
人間を人間として扱わない立場に立たされて「だって上の命令だもん」とそれに従っていたかもしれない。

この映画がサウルの視点だからと言って、自分がサウルとは限らない。
サウルの背中をライフルで狙う上官が自分かもしれない、ということを知っておかないと。

戦時下においてだけの話じゃなく、
平成の世においても、自分は、他人の人権を踏みにじることを、しているかもしれない、と自分を省みる必要性を教えてくれる映画です。



*****


監督はこの映画を「英雄映画やホラー映画にするつもりはなかった」と。

なので全体としては淡々としてますし、画面の情報量が少ないので、グロ映像はそれほどないです。


最初を乗り越えればあとは大丈夫かと。
途中、ガス室がいっぱいになってそれでも追加で列車が来た後に実施されることのシーンはまたとんでもないですが。
まぁその2つですね。

その2シーンさえクリアできれば、観れます。

どうぞ、頑張ってください。




*****



最後に僕のトラウマ映画3本。


『鬼が来た!』
『サラの鍵』
『光の雨』

です。
リンク貼りません。

四コマ映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 ふとした事故超人的なパワーを得たおじさんが主人公。
腕力はあるが足の速さは変わらないので移動はスクーター。
ヒロインが最高にキュートだし、敵はヒース・レジャーのジョーカーを彷彿とさせる不気味さ。


ちょっとしたグロもあるしエロもあってサービスも十分だけど、ヒーローものとして過剰ではないのが好感が持てます。

イタリアでは実写のヒーロー映画が根付いていないとのことで、この映画が初の成功作で興行的にも批評的にも良い結果を出した模様。

ヒーロー映画を撮り慣れていないという点では日本も同じで、その不器用な感じ、行ききれない感じが主人公のキャラクターとちょうど重なっていていい相乗効果をあげています
映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

ラースと、その彼女

WebマガジンFILMAGAで映画のコラム連載をさせていただくことになりました。
ミニシアター系の旧作発掘係として月2回映画紹介していきます。
どうぞよろしくお願いいたします!
一発目は僕が一番好きな映画!

ラースと、その彼女
昨年の1月に架空の映画紹介をするという謎のイラスト展を開いて、3月からは四コマ映画ってのをコソコソ描いておりましたが、なんとまぁこんなことが起こるのでしょうか。
映画のコラムの連載ですよ。なんてこった。。
一応仕事として請けているので、この分量を月2回ってかなりヘビーなのですが、頑張ろうと思います。



四コマ映画『ムーンライト』




「この子らを世の光に」は社会福祉の父と呼ばれる糸賀一雄の言葉。

この子ら(に)世の光(を)
じゃなくて
この子ら(を)世の光(に)。

「障害児に光を当ててあげよう」ではなく、
「障害児の光を世の中に当てよう」という考え方。

この映画の主人公は、貧困層の黒人でセクシャリティ的にも未だに後ろ指を刺されるもの。

本当はなんの困難でもないはずのこの3つ(貧困は困難ですね…)だけど、社会の無理解や堂々とした差別感情によってただ普通に生きるということを阻害されてしまう。

映画では、主人公シャロンを年代別に子供、高校生、大人のパートに分けて3人の俳優で演じ、一人の男性の半生を静かに描いている。

少年期のシャロンは、家にはシングルマザーで麻薬中毒の母がいるがネグレクトでさらに学校に行けばいじめられる。

ある日、いじめられて廃墟に隠れているところをあるおじさんに助けられ、その後困った時など助けてくれる存在になってくれる。
シャロンがおそらく初めて、彼の家の真っ白でふっかふかの枕とベッドで眠る姿が愛おしくも悲しい。
この人物、シャロンにとって父親がわり、そして生きる道しるべの人物となる。

高校時代のシャロンもまた、学校でのいじめは続き、母の麻薬中毒も強まっており、自分のバイト代も母の麻薬を買う金として使われてしまう。

そして、大人になったシャロン。
華奢だった体はアニメのような筋肉隆々になり、周りを威嚇するように装飾品をつけ、高級車をステレオガンガンで走らせる。
が、その目だけは、かつての弱い、常に怯えたような目のまま。

***

衝撃なのはこれのほとんどが実話だということ。
主人公に起きることは全部、原作者か監督に起きたこと、だそう。
(原作者の母も、監督も母も麻薬中毒であった)
実際に起きた(つまり現在も起きている)衝撃的なエピーソドの連続だけど、直接的な描写はなるべく避けて、ひたすらに美しい映像の中で意外と淡々と物語は進む。
こんなに過酷なストーリーなのに「もう一度見たい」と思えるのは映像が美しいからかもしれない。
この世界にもう一度浸りたいと思える。

****

シャロンの父親がわりになるフアンという男がかっこよくて、いちいち名言を言ってくる。
「自分の人生は自分で決めろ 周りに決めさせるな」はわかりやすい名言だけど、
本当に何気ないし、
全然名言のつもりもなかったと思うけど
僕がぐさっときたのは
「ここで何してる」。
あ、俺ここで何してるんだろと思っちゃうし、
そういえば「ここで何してる」ってあんまり言われたくない。。
おそらく大人シャロンも昔フアンに言われた「ここで何してる」という言葉が常に自分を追いかけてきてるんだと思う。

***

話が個人的であればあるほど普遍性を持って観る人の心に直接刺さってくる。
それはつまり、住んでる場所が違おうと体の表面の色が違おうとセクシャリティが違おうと、人間であれば何が悲しくて何が嬉しいかは同じだということ。

本当はこんな映画なければよかった。
こんな映画が生まれない世の中ならよかった。
「観てください」なんて言わなくていい世の中ならよかったのにね。













四コマ映画『さざなみ』

映画『さざなみ








邦題批判ブームが続いていますね。
どうせならいい邦題にはちゃんと褒めて欲しいです。

この「さざなみ」はすばらしい邦題。
原題は「45 Years」。

主人公の夫婦が結婚45周年なので、そのまま。
向こうのタイトルってほんとシンプルですね。

週末に結婚45周年パーティーを控えた熟年夫婦が主人公。

ある朝、夫の元に手紙が。
50年以上前に付き合っていた恋人の遺体がスイスの山で発見された、と。

夫のその恋人がスイスで山登りをしていたら、恋人だけ滑落しちゃってそのまま遺体は発見されることはなかった。
そして、その後今の奥さんと結婚しました。

妻はそんなこと全然知らなかったし(あ、知ってたかも)、夫もほとんど忘れていたんだけど、突然の知らせに夫の思い出がスイッチ発動。

物置から昔の日記や写真を引っ張り出して思い出に耽りまくり。

ひっっっっさびさの夫婦生活の直後にも「彼女と結婚するつもりだった」なんてこと言っちゃう始末。


妻は心の中で「ふっざけんじゃね~~~~~」ってずっと思ってるんだけど、それを表に出して今更この結婚生活にヒビを入れたくもない。

名女優シャーロット・ランプリングがそのあたりの演技が上手い!
目、怖いもん。
(この演技でオスカーノミネートされました)

「私めちゃくちゃ怒ってるし悲しいし不安だけどそれを表現したりはしません。
あなたはそうやって堂々と彼女の思い出にふけって結婚生活ぶち壊そうとしてるけど、私はそういうことしません。」
っていう表情が上手いし、怖い。。

結局は夫に不満を口にするんだけど、夫の方はイマイチ意味がわかってない。
「昔の話じゃん。。」ってな感じ。それにまたワナワナする妻。


しかもその彼女の写真を妻も見ちゃって、そこで衝撃の事実を目撃。。

妻の心はさざなみのようにザワついたまま、それは永久に止まらない。

そして、45周年パーティー当日を迎えるのです。
あ~怖い、あ~怖い。




四コマ映画『フレンチ・ラン』

映画「フレンチ・ラン







 これぞ正しい90分映画。


どうせ知らない人たち(主演の二人知らなかったもので、、)がパリを舞台に走ったり殴ったり困ったり多分誰か死んだりして85分後に事件解決して、「全くお前って奴は!ハハハッ!」って肩でも組んでパート2を匂わせながら知らないラッパーの曲がエンドロールで流れる映画だろうなと思っていたら、

本当にそんな感じの映画でした。


でもいいんです!
正解なんです!

かっこいい凸凹コンビがちょっと笑いも挟みつつ対立しあったり協力しあったりして、「スリ」というポイントも抑えつつ、サブキャラの女性も可愛くて、アクションもほとんどスタントなしでリアルにやって、それだけだと流石に映画として軽すぎるから、実際の世相を反映させたテロに怯えるパリを舞台に、ツイッターで過激なことを呟かれるとすぐにそれに煽られる民衆への風刺も入れつつ、陰謀と裏切りのこんがらがった事件を凸凹コンビが解決したら、あっという間に時間は過ぎて90分。


これだけ楽しんでも90分しか時間経ってないんだからお得お得。

大好き、90分映画。



映画「フレンチ・ラン





四コマ映画『ヨーヨーマと旅するシルクロード』

ヨーヨーマと旅するシルクロード






シルクロードとは、ヨーローッパ大陸とユーラシア大陸をズバッと横断する陸続きの通商路のこと。

ヨーヨー・マの「シルクロード・プロジェクト」は、シルクロード沿いの民族音楽の音楽家たちを集めて、それぞれの民族の差異、共通項を見出しさらに新しい音楽作り演奏することで、それぞれの伝統音楽を残していこうという、文化人類学的な意味合いで始められた。

このドキュメンタリー映画も冒頭は「シルクロード・プロジェクト」の成り立ちや過程を追っているが、途中から演奏家一人一人にスポットがあてられていく。

イランで革命が起きて家族全員死に自身はヨーロッパを何千キロも歩いて逃げた過去を持つ、イランのケイハン・カルホール。
内戦続くシリアから亡命したキナン・アズメ。
文化大革命で国外に出させるために両親に音楽を学ばされたという中国のウー・マン。
などなど。

故郷を離れて国境を越えて活躍する音楽家たちの、どこにいても“外国人”である自分のアイデンティティを再構築する姿を描いている。

神妙な気持ちにもなるけど、当然ながら世界的な音楽家たちの名演も素晴らしい。
特に最後の全員によるアンサンブルが民族音楽の結晶としてのカタルシスに満ちていて大感動です。