ハリエットと呼ばれた女 〜アニーの数奇な運命〜

『ラウンドヘイの庭の場面』(1888年製作の映画)











これは世界最古のフィルムってことですかね。
たぶん撮影実験か、カメラの販売プロモーション用らしいです。
※有料公開した世界最古の映画は『ラ・シオタ駅への列車の到着』らしいです。





ルイ・ル・プランスによる約2秒の動画。
相当金持ちの家の庭で、4人のレディース&ジェントルメンがダンス(というより移動)している様子。


ウィキペディアによると、向かって右奥のサラおばあちゃんは「回転しながら後方に歩く」ということだけど、どうみてもヨロヨロしながらただ後ろに下がっているだけ。
そしてこの撮影の10日後サラおばあちゃんは逝去なさいます。


ジョセフおじいちゃんは、白ヒゲを蓄えてロングコートの裾を大きく揺らしながらサラおばあちゃんの周囲を45度ほど周遊。
ジョセフおじいちゃんが一番楽しそうに動いているので、ジョセフおじいちゃんはこの撮影にノリノリだった模様。


アドルフは「2秒でそんなに移動できるのか!」と驚かせるほどに長い脚でスタスタと右から左へ移動する。
アドルフはこの映画の監督であるルイ・ル・プランスの息子である。


そして謎の女、ハリエット・ハートレイ。
この女性についての記載はない。
ハリエットについて調べてみたので、下の方を読んでいただきたい。
もしかしたら、ハリエットとアドルフは付き合っていたか、もしくは周りの大人たちによって結婚を勧められていた2人かもしれない。
しかしハリエットとアドルフの動きにまったく親密さは読めない。
アドルフはちょっと照れているようにも見えるが、ハリエットの回転からは「冗談じゃない!何なの!」感が満載。


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現存する最古のフィルムに人間の動作が写っていることは興味深い。


しかも、たとえばフェルメールの「牛乳を注ぐ女」のような日常的な動作を写すのではなく、この撮影直前にとっさに振り付けしたような動きを撮ったのも何故か。
つまりこの撮影者は芸術家でも研究家でもない。
動画は単なる記録技術にすぎなくて、芸術になるうるものだなんてそのときには思いもしなかったのではないか。
実際、ルイ・ル・プランスは発明家であり、カメラの特許を出願したりカメラの販売旅行をするなど、なかなかのやり手。
(妻のエリザベスは芸術家だったが)


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こ動画には老夫婦と若い男女が意図的に対比して描かれている。

女性は比較的おとなしい動作だが、男性はだいぶ快活に動いている。
当時の男女差が現れているのかもしれない。もしくは当時のスカートや靴は動きにくいものだったのかもしれない。


老夫婦の年齢は不明だが、
サラおばあちゃんがこの10日後に亡くなってるのでだいぶ高齢かと。


監督のルイ・ル・プランスが撮影時47歳であることから息子アドルフは24歳くらいではないかと推測。
ハリエット・ハートレイはこの時15歳である可能性が高い(詳細は下に記述した)。


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どうしても僕には、この5人(監督ルイも含めた)に2018年の映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観せたいという未来人としての傲慢な欲望が湧いてくるけど、世界最古のフィルムとして焼きついている5人の純真さを穢してもいけない。


あ、サラおばあちゃんはこの10日後に亡くなったわけだから、きっと家族はサラおばあちゃんのこの元気な後方移動を何度も見直したはず。
てことは、動画が単なる科学技術ではなく、人の感情に寄り添うものだということを世界の誰より早く気づいた人たちでもあるかも。
ちなみにルイ・ル・プランス自身もこの2年後、列車の中で謎の失踪を遂げている。
(2003年、パリ警察の記録の中からル・プランスによく似た1890年の溺死体の写真が見つかっている。怖い。)




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謎の女 ハリエット・ハートレイ。


ハリエット・ハートレイを調べていたらこのサイトにぶつかった。
http://www.imdb.com/name/nm1799952/bio?ref_=nm_ov_bio_sm


トリビアのとこで、彼女の名前は「アニー・ハートレイであり、ルイとルイの妻エリザベスそれぞれの自伝にも彼女のことをアニーと書いてある。誰かが間違って〝ハリエット・ハートレイ〟と記載してしまったのだ」と書いてある。

2017年の記事(https://videonett.no/roundhay-garden-scene/)ではこれ採用して書かれている。
これを信じると、アニーはルイとエリザベスの共通の友人である言える。
「撮影するから来てよ」と頼まれたのだろう。

しかしこれ(http://www.imdb.com/name/nm1799952/bio?ref_=nm_ov_bio_sm)によるとアニーは撮影時15歳だったことになる。若すぎないか。
と思って見直してみると、当時の15歳は大人びてたかもしれないし、15歳でも十分大人としてこれくらいの衣装は普段から着てたかもしれないし、撮影用に着たかもしれない。


いずれにせよ、アニー・ハートレイの追跡はここで終わった。
アニーのことについて追うことはできなかった。残念。


これからも永遠にハリエット・ハートレイ、いや、アニー・ハートレイは未来人である我々に背を向け続けるのである。



 →映画イラスト(四コマ映画)